2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 廿日市トライアスロン応援記  | トップページ | 2011年8月6日原爆の日 »

野球観戦から見る起立問題  

僕は小学校6年生の男子。

今日は待ちに待った遠足の日!

マツダズームズームスタジアムで地元球団、広島カープの応援だ。

私の通う市立小学校では、学校行事として年に一度の野球観戦がある。

少し自慢だけど、OBに現役のカープ選手がいる。だから父兄にも熱狂的ファンが多い!

そのため、引率ボランティアは募集後直ぐ締め切りになるそうだ。

さて、担任のK先生は大阪府出身、根っからのタイガースファンだ。

奇しくも今日はその阪神と対戦する。

今年ここまでの対戦成績は、圧倒的にタイガースが優勢である。

私としては、何とかカープに勝利して欲しい!

球場に到着した。真っ赤な帽子が目立つ私たち集団は、例年通りカープ応援側に陣取る。場内放送より、私の通う小学校の名前が呼ばれ、見学御礼を告げるアナウンスがあった。

生徒一同、歓声により応える。

中盤まで、タイガースに大差をつけられていた。

劣勢のカープに、応援側スタンドの雰囲気は重苦しかった。

しかし、終盤に差し掛かる頃、看板選手がホームランを打つ!

『かっとばせー!くりはら♪くりはら♪くりはら♪』

メガホンを上下に振りながらスクワットに似た動きをとるスタンディングオペレーションは、すっかりカープ独特の応援スタイルに定着してきたようだ。

得点が入ると、立ち上がりながら万歳のポーズを取るウエーブがスタンド中に巻き起こる。

勿論、生徒たちもウエーブ仲間にいれてもらう!

終盤、大量点をあげたカープが試合を見事に引っくり返す。

引き続きチャンスが訪れる。周囲は否が応でも盛り上がる!

生徒も周囲にリズムを合わせ、見よう見真似の応援に興じた。

しかし、最高潮ともいえる雰囲気の中、担任のK先生は少しも愉しげな顔をしていない。

スタンディングオペレーション、ウエーブの最中でさえ、座って静かにプレイを眺めている。

その先生の周囲の生徒だけは、応援で立ち上がることなく座ったまま観戦していた。

そのうちの幾人かは、それでも応援が気になるように見えた。

しかし、明らかに野球観戦に興味を示さない生徒も窺えた。

そこに、熱狂的カープファンで知られる教頭先生がやってきた。

開口一番。

K先生、少しは生徒と野球観戦を愉しんでみてはいかがでしょうか?クラスでまとまって地元チームを応援することは、生徒に郷土愛と連帯感を持たせる絶好のチャンスですよ。

また、先生と生徒の親睦は学校行事の目的でもあります。K先生がカープファンではないことは知っているけど、ここは学校行事と割り切ってもらえないでしょうか?』

するとK先生は目を丸くして

『教頭先生、それは私がカープファンと同様、起立する応援を繰り返せという意味でしょうか?』

『うん、・・・だけど眺めていると君がちっとも応援しないものだから、君の周囲だけがムードに取り残されているようにも見えるよ。まあ、考えてもみてくれ、少数の生徒が先生に遠慮して試合を観戦したとする。これでは楽しいはずの遠足が果たしてどうなる?

また、本日引率のため参加している父兄の視線も、少しは気を使って欲しいよ』

『お言葉ですが教頭先生、本日は当然のことながら職務です。

だから、野球観戦を心から愉しむつもりなど、当初から微塵もありません。それどころか、引率により、とてつもなく神経を使っているのです。

だけど、私の周囲を選んで座る生徒は、実のところ私と同じくカープ嫌いの子や、また野球に興味を示さない生徒ばかりです。

この子たちは、球場での自分達の居場所を求める意味もあり、私のところに集まるのです。だから、その子達の言い分をしっかり聞いてあげることも大切な教育だと考えます。』

『だけど、児童がまとまり応援するムードに水を差す行為は考えものだよ。君の偏狭な考え方は周囲に悪い影響を与える。それに気がつかないとすれば君、教員失格だよ。』

『偏狭とは随分なお言葉ですね。それでは教頭お尋ねします。一部の生徒がこの先、野球に悪感情を抱く結果になったとしても無理矢理起立して応援するよう、私は指導しなければならないのでしょうか?』

『いや、少なくとも君だけは立って応援をしなくては示しがつかないと言っているのだよ。それは、例え誰かの感情を損なおうが、また特定の人にえこひいきになろうが・・・団体活動を円滑に遂行させることは我々の職務なんだよ』

『教頭先生、本日の私は仕事上の任務としてカープ応援席にいます。

その場所で応援する児童も、また応援しない児童もすべて私が受け持つ生徒です。生徒の野球に対する受け止め方はそれぞれに異なります。その一つ一つと向き合ってこそ、教育だと考えてきました。また、起立して応援する生徒、起立しない生徒がいて、お互いがそれぞれの立場と考え方を尊重し認め合う、また、自由闊達な意見交換をする。こうしたリベラルな雰囲気作りこそ、生徒指導に必要なことと考えます。今回、私が立ってカープを応援しないことを、むしろみんなの議題にして欲しいくらいです。』

『うむ-、君の考え方はよく分かったよ。ただ、今後、君のおかげで教育委員会や学校側の指導方針すべてに反抗する生徒や先生が増えないか不安だ。ところで、公務遂行において上司から発せられる職務命令に背くと、国家公務員法でどうなるか知っているかい』

『教頭先生、それって・・・威しですか?それでは私の教育に対する理念や信条は一体どうなるのでしょうか?公務員である以上、誰も守ってくれないのでしょうか?』

『そんな目くじらを立てなくても良いよ。君の好きなチームを変えろとは言ってない。ただ、決められた場所で、職員はしかるべき行動をとることの重要性について、もっと賢しこく振舞うように忠告したいのだよ。特に君は若くて将来がある身だからね。ただ、それだけだよ』

『ただ、それだけ?』

さて、上司である教頭に理不尽な要求を突きつけられたと怒りを覚えたK先生、早速この話を裁判所に持ち込んだ。すると、行政に媚を売る裁判官は、K先生の要求を不当と跳ね返した。そのタイミングを待っていたとばかりに行政の長は、学校行事により野球観戦に行った際、絶対多数のファンのいる場所(公共の場と呼んだ?)では、ご当地チームの応援歌が鳴り響く間は、引率の教員は一様に起立して応援しなくてはならないとの法案を提議した。

圧倒的勢力を誇るワンマン首長のいる議会のため、この法案はいとも簡単に可決、法案化したそうだ。因みに裁判官、首長はあの教頭と同じ熱狂的カープファンだったと聴く。

これは、K先生と同じく、別の学校で先生を勤める私の父親から聴いた話である。

父は続ける。

規則とは人を治めやすくするために次々と作り変えられる。

また、罰則だけが唯一、規則に重みを与える。

共同社会では、規則が出来ればできるほど道徳心が廃れ人心は貧弱に陥る。

また、考えても仕方がないやという諦念にも似た感情より、思考をしない人が増える。

歴史は繰り返される。教育の現場に行政や政治の圧力が必要以上に加わることは、実は恐ろしいことなんだ。

普段は優しい父のまなざしは、いつになく厳しい視線で遠い一点を見つめていた。

 

つづく

国家公務員法

(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)

98 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

日本国憲法

19 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

« 廿日市トライアスロン応援記  | トップページ | 2011年8月6日原爆の日 »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

先日は、お電話をありがとうございました。
父は、日に日に順調に回復をしており、安心しております。
やはり、家族の力で“不死身”になっているようです。

さて、私の家の近くに剣道の道場があります。
近所の子は、小学校生になると、半強制的に剣道をやらされます。
私は、3人の男の子が居ますが、どの子にも剣道を無理にさせませんでした。
かなりのプレッシャーでしたが、長男も次男も自分の意志で、
中学校では、陸上部に入ってくれました。
3男は、ジュニアバスケで、剣道とはまったく無縁でした。

何でも、強制するのは、良くないと思いますよね。

えがさん
お父さんのご回復、おめでとうございます!
本人の頑張りと、ご家族の愛の力ですね。よかった!

さて、剣道の話はエガさんらしい?!(失礼)
本当に強制はいけませんよねー
だけど、そんなしがらみだらけが現代社会のような気がしますよ。
だからストレスが溜まる!
こんな棲みにくい世にしたのは、すべて規則です!!
もう、囚われの身にならないと、心底決意したいものですね!

内容から逸れるかもしれませんが
新田次郎の山岳小説『聖職の碑』を思い出しました。
大正時代、
白樺派教員とそれに反対する教員や村の助役、
郡の視学との対立の中、
集団宿泊的行事として実施された
木曽駒ヶ岳集団登山における気象遭難事故(実話)。

腹さん
コメント有難うございます。新田次郎の八甲田山ではない小説はあいにく知りません。解りました!夏休みの読書感想文としますね?!
とにかく、力で発言をねじふせようとすることが、悲劇を招くのですよね。その力なんて勢いやムードが支配的。真理とはほど遠いですよ。
また、教育現場こそ、真に自由でなければならないですよね。対極する考え方をぶつけ生徒に考えさせる場。これこそ理想の教育、また、教育者なら自分の言葉で語れ!ですよ。いよいよ私も老いが・・・???

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/185064/40812805

この記事へのトラックバック一覧です: 野球観戦から見る起立問題  :

« 廿日市トライアスロン応援記  | トップページ | 2011年8月6日原爆の日 »