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波止場のオヤジとアニキ

かつて無類の釣り好きでもあった。

その名残もあり、休日のトレーニングに必ず立ち寄る漁港がある。

季節を問わず太公望で賑わう草津港である。

その波止は市街地から至近の上、様々な魚種が釣れ、いつも太公望で賑わう。

昨年の秋は大量の鰯が回遊し、それを追ってハマチが群れを成した。

今、この時期といえばイカ釣りが盛りを迎える。

5年ほど前になるか。

漁港の波止で83歳のオヤジさんと、50代後半のアニキと挨拶を交わすようになる。

週末に限り悪天候に構わず走る私であるが、彼らも負けじとばかり、釣り糸を垂れる。

知らぬ間に、長い付き合いとなる。

近年では挨拶に留まらず、長々と話し込むようになる。

話題といえば、近頃の釣果に始まり釣果に終わる。

冗談交じりの、他愛もない話が大半である。

常連の一人、アニキといえば、地元機械メーカーのエンジニア。

この波止に通い詰め、10年が経過したと語る。

理由はこうだ。

それまでのアニキといえば、仕事一本槍の生活であった。

休日返上で働くことすら珍しくなかったようである。

しかし、ある時期に仕事で行き詰まり、転職を考えるまで追い詰められた。

丁度その頃である。

少年時代に度々訪れたこの波止に再び現れる。

釣り糸を垂らす。

ぼんやり海を見つめていると心がどんな状態にあれ、晴れ晴れすることに気付く。

子供の頃の童心、あのワクワクした感情になると語る。

また、休日が明け会社に向かう自らの気持ちは、以前とは別人の如く前向きに変わっていく。

仕事に対する自信も次第に回復していったとか。

「息抜きも大切。スローライフこそ我が人生!」

再び波止に通う人となり、感情だけでなく考え方まで変化したそうだ。

さて、その彼の行為である。

持ち物や動作において、確かに魚釣りといえる。

しかし、全くもって釣果にこだわらない。

魚を釣ればその場は素直に喜ぶが、釣れなくとも腹を立てない。

結果を追い求めると、モノに対する捉われの気持ちが生じる。

すると、大自然に心溶け込ませることが出来なくなるらしい。

「獲物は神からの恵み」と考えれば良いのだと。

時に素性も分からぬランナーに向かい、大事な会社情報を話すことに余計な心配をしてしまう。

しかし、これこそ海の導く力であろう。

その場その場により、心の開放に酔いしれるアニキに年々親しみが沸く一方である。

さて、次はオヤジである。

彼は数年前、愛妻に先立たれてしまった。

そのため朝っぱらからビール、つまみにまたビール!

無類の酒好きは、波止場の名物でもある。

そのオヤジ、釣り人と見れば近づき話しかける。

初顔とあれば、周辺の海の様子につき念入りに解説を尽くす。

釣りをするより、他人と会話している時間がはるかに長い。

家に居ても一人なので、ここに来て寂しさを紛らわせているのかもしれない。

何時しか、この波止を目指す私の最も気になる存在となっていた。

オヤジが、走ってきた私に向かい必ず吐く台詞である。

「そんなに足が長くては、走るのに邪魔にならないか?」

「これでも折り畳んでいる様子が分かりませんか?」 

事実、そんなはずないのであるが・・・

会話も洒落ていると言いがたい。

しかし、面白おかしくその場、その場を盛り上げる。

しかもごく自然に。

だから彼の周囲に人が集まる。

そんな親父との、先日の会話である。

彼より10歳年上、93歳になる方がかくしゃくと歩いてた。

顔見知りの彼について、オヤジは次の評価を加える。

「あの人はどうしてあんなに元気なのか分かるか? つまり、あまり悩みを持たないからなんだよ。

「あの体を見よ。20歳以上、若く見える。人生こうありたい。だろ?」

私が頷くと

そうと決まれば悩まないことだ、つまり自分を大切にすることだよ」

オヤジは続ける。 

「人間はいつもあれこれ考える、でも、そいつは悲観的なことが大半ではないだろうか。」

「だから早死にするんだ。私の友人を例にとるまでもなく、気が付く人、頭の良い人に限り早死にする。」

「ここで一つ忠告だ。 長生きしたければ結論のでないことは考えないことだよ。つまり後悔しても始まらないってこと。」

オヤジは次第に調子付く。 

「とにかくたった一人の存在が自分。そいつを中心に据え、ほかの誰よりも大切にしなくては駄目だ。他人が自分にどんな評価を下そうが、構うことなどない。自分を信じて、自分を愛し続けなさい。」

更に饒舌に・・・

「ところで、あんた。自分の歩いた足跡を拾って歩くことができるか?

 また、そんな人生に納得するか??

後ろを振り向く動作を繰り返す。 

 

「普通に考えると、人間は重い過去をぶらさげたまま前に進むなどできやしない。だからいつでも荷物を軽くすべきなんだよ。」

目の前の海を見つめ、しばしの独演会。 

 

「死んでしまったら痛いも気持ち良いもなくなる。生きているうちが華。

 生きているから何でもできる。とにかくその場で思いつめないことだな。

 将来の不幸を予測して生きるから、自殺を考えつくことになる。未来は明るい。

 良いことが待ち受けるといつでも思いなさい。また、強く信じなさい。

オヤジの熱弁が終わるまで、額の汗を拭くことすら忘れ聞き入っていた。

その日、彼から次なる人生の極意を学んだ。

考え方と行動にいささかの矛盾があってはならない。 

過去を忘れ、今に生きる。 

また、たった一人の自分を大切にする。

その場を立ち去るとき、彼のこれまでの生き様を想像していた。

「親父もきっと、波止場のアニキと同じ時期があったのではないか? 

いや、もしかして、今がそうい時期かもしれないぞ。 

そういう自分だって、言葉にできない不安をこの場で解消しようとしている、ほとんど本能的なところで・・・」

そう考えると、人を惹きつけて止まない海の魅力と、偉大なエネルギーをあらためて感じた。

「海により人は癒される。また、海を前にすると人は素直な気持ちになれる。」

波止場のオヤジとアニキと共に、これからも明るく元気に年を重ねてゆきたい。

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